立ち退く必要がある場合
次のいずれかの事情に該当する場合、立ち退き料は請求することが出来ず、貸主の要求のとおりに明け渡さなければいけません。
1.立ち退きの合意または正当事由がある場合
立ち退く事に合意した場合、正当事由の有無に関わらず立ち退き料は請求できません。
正当事由がある場合も立ち退きに応じなければいけません。
2.借主に契約違反がある場合
借主には、「賃料を支払う義務」「契約で決められた使用方法に従う義務」などがあります。
「賃料の未払い」や、「住居物件を店舗への無断改装」といった契約違反がある場合、立ち退き料を請求することは出来ません。
賃料は要りませんなどと言われて払わずにいると、賃料滞納で契約違反となってしまいますので、も賃料は必ず払っておくようにして下さい。
3.一時使用のための賃貸借契約の場合
一時的な使用を前提とした契約の場合、立ち退き料を請求することが出来ません。
「一時使用の賃貸借」と認められるには、転勤期間中のみの賃貸、海水浴期間中のみの賃貸など、一時的な使用としたことへの「合理的な理由」が必要となります。
一時的な使用として合理的な理由があった場合でも、契約が更新されている場合は通常の賃貸借契約として判断され、立ち退き料を請求出来る可能性が高くなります。
4.定期建物賃貸借契約の場合
定期建物賃貸借契約とは、契約を更新しないことを前提とした契約のことで、この場合も立ち退き料は請求出来ません。
定期建物賃貸借と認められるには
- 契約書を公正証書などの書面で交わすこと
- 契約期間満了の際、契約更新せずに終了する旨を契約書へ記載すること
- 契約締結前に定期賃貸借である旨を書面で交付・説明していること
この3つの要件を満たす必要があります。
上記のいずれかでも怠っていた場合や、契約更新している場合は通常の賃貸借契約と判断されます。
5.取り壊し予定の建物賃貸借
区画整理や建て替えなどで取り壊すことが明らかな場合、「取り壊し時期に賃貸借契約が終了する」旨と「建物を取り壊す具体的な理由」を記載して契約した場合、立ち退き料を請求することは出来ません。
この契約は取り壊す時期が明確になっていることが前提ですので、「貸主が病気になったら取り壊す」など、取り壊す要件が不確定な場合、通常の賃貸借契約と判断されます。
6.競売によって所有者が変更した場合
競売で大家が変わり新たな大家から立ち退きを要求された場合、「アパートなどに入居する前に設定された抵当権による、競売によって所有者が変更になった場合」立ち退き料は請求できません。
抵当権が設定される前から入居していた場合は、正当事由がなければ立ち退く必要はありません。
また、通常の売買で所有者が変わった場合でも同じく正当事由がなければ立ち退く必要はありません。
立ち退き料を請求出来る場合
上記に該当しなかった場合は、立ち退き料を請求出来る可能性が高いと言えます。
実際に定期建物賃貸借や一時使用の賃貸借契約で借りている方は少なく、ほとんどの場合は「正当事由」があるかどうかがポイントとなります。
自分は立ち退き料を請求出来るかどうか知りたい方は、是非立ち退きに応じる前にご相談下さい。
立ち退きを迫られたら
まずは貸主から立ち退きを要求されている事情が「正当事由」として認められるかどうかを確認する事になります。
具体的には、賃貸借契約の種類、立ち退きの事情、立ち退きの条件、契約違反の有無、これらを総合的に考慮して、正当事由の有無を判断することになります。
正当事由に該当するか分からない場合は専門家へ相談して確認してみましょう。
ここで立ち退きに応じてしまうと、正当事由がない場合でも立ち退くことになってしまいます。
貸主などから署名や捺印を求められた場合、どんな書類なのか特に慎重に確認するようにし、分からない場合の即答はしないようにして下さい。
正当事由があった場合
この場合、貸主から立ち退き通知が届いてから6ヶ月~1年の間で賃貸借契約が終了しますので、賃貸借契約が終了するまでに立ち退く事になります。
正当事由がなかった場合
この場合、貸主へ「立ち退き拒否」または、「立ち退き料」を請求することが出来ます。
立ち退き料の決め方ですが、具体的な決まりはありません。
判例や借家権価格などが目安となりますがこれはあくまでも目安であって具体的には貸主の事情と借主の事情や話し合いで決められていきます。
借家権価格=(更地価格×0.5~0.7×0.3)
立ち退きでよくある誤解
「書面で通知」することで6ヶ月後に賃貸借契約は終了すると誤解している方が多いようです。
正確には、「正当事由」と「書面での通知」この2つが必要です。
立ち退きに合意してしまった場合や賃貸借契約の種類によっては、正当事由がなくても立ち退く必要がありますが、基本的には「正当事由」がなければ立ち退く必要はありません。
貸主の立ち退き要求には「正当事由」が必要と覚えて下さいね。
立ち退きの通知を受けて、お困りの方へ
渡辺健太行政書士事務所では、立ち退き通知を受けた方のお悩みに関して、立ち退きトラブルの無料相談を実施中です。お電話・メールにて、お気軽にお問い合わせください。