立ち退き料の請求方法

ここまでで、立ち退き料を請求出来るかが分かり、立ち退き料の目安が分かったら立ち退き料を請求することになります。
大家や管理会社から立ち退き料を提示されることもありますが、提示額で合意出来ない場合は改めて立ち退き料を請求いたします。

1.話し合いでの請求

まずは、話し合いで立ち退き料を請求しますが、口頭でも、書面でも、伝わりさえすれば問題ありません。
ただ、目的は立ち退き料を請求することではなく、立ち退き料などの要求に応じてもらう事です。
話し合いでの合意は、後述する裁判と比べますと、お互いにメリットが大きいですので、まずは話合いでの合意を目指していく事になります。

内容証明で請求

直接の請求がしづらい場合は、内容証明を使いますが内容証明さえ使えばいいかというと、そうではありません。
内容証明に法的拘束力はないので、内容証明で立ち退き料を請求したからといって相手がこちらの要求に従う義務は発生致しないのです。
それでは何故内容証明を使うのでしょうか。

1.証拠力が強い

内容証明は「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容を伝えたか」が証明されます。
その為、あの時立ち退きに応じたはずだとか、そんな話は聞いていないなど「言った・言わない」のトラブルを防止出来ます。

2.心理的な圧力をかける

内容証明で送らなくても通知は届くのにわざわざ内容証明を使うということは、それだけの覚悟がある事を相手に示す事になります。
行政書士は直接の交渉が出来ない分、この心理的な圧力を上手に使った内容証明を送ります。

3.不用意な合意を避ける

立ち退きトラブルでは、相手方の多くは管理会社や不動産会社、時には弁護士と言う場合もあります。
交渉の相手方は、少なくともあなたよりは立ち退きについての法律知識とノウハウを持っています。そんな相手と直接話し合ってもこちらのペースで話を進めることは出来ません。
一度でも立ち退きに合意してしまえば、後になって立ち退き料を請求することは難しいです。
ところが書面なら、その場で即答してしまう事はなく、誰かに相談してから時間をかけて返答が出来ますので、一方的に不利な条件で合意してしまうことを防ぐ事が出来ます。

内容証明を作るときの注意点

内容証明は作る人のセンスによって、同じ内容を伝える場合でも受ける印象は大きく変わります。
よく見る内容証明が「○○日までに立ち退き料として○○円支払いなさい。応じなければ法的手段に移ります」このような一方通行型です。
あなたがこのような内容証明をもらったら「大変だ!早く立ち退き料を払わないと」のような気持ちになるでしょうか?
これまでの経験上、「こっちの条件を聞いてくれるならあなたの条件も聞きましょう」といった対話型の方が早期に円満合意できる可能性が高いです。
裁判なんて面倒な事はお互いに避けたいと思っています。
あなたが内容証明を送る場合、こんな一方通行型の内容証明を送らないようご注意下さい。

2.調停で請求

話し合いで解決出来なかった場合は調停で話し合うことになります。
調停では、調停委員を介して話し合いが進められます。
立ち退き料などの条件がまとまれば、調停調書が作られて調停成立として終了いたします。
相手が出席しなかったり、調停でも合意出来なかった場合は調停不成立となります。

3.裁判で請求

話し合いでも調停でも話し合いでは解決できない場合に、裁判で請求していくことになります。
お互いの事情を基に、立ち退き料の額が決められますが、裁判で請求したからといって希望額の立ち退き料が貰えるわけではありませんのでご注意下さい。

2010年12月6日 |

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立ち退く必要がある場合

次のいずれかの事情に該当する場合、立ち退き料は請求することが出来ず、貸主の要求のとおりに明け渡さなければいけません。

1.立ち退きの合意または正当事由がある場合

立ち退く事に合意した場合、正当事由の有無に関わらず立ち退き料は請求できません。
正当事由がある場合も立ち退きに応じなければいけません。

2.借主に契約違反がある場合

借主には、「賃料を支払う義務」「契約で決められた使用方法に従う義務」などがあります。

「賃料の未払い」や、「住居物件を店舗への無断改装」といった契約違反がある場合、立ち退き料を請求することは出来ません。

賃料は要りませんなどと言われて払わずにいると、賃料滞納で契約違反となってしまいますので、も賃料は必ず払っておくようにして下さい。

3.一時使用のための賃貸借契約の場合

一時的な使用を前提とした契約の場合、立ち退き料を請求することが出来ません。

「一時使用の賃貸借」と認められるには、転勤期間中のみの賃貸、海水浴期間中のみの賃貸など、一時的な使用としたことへの「合理的な理由」が必要となります。

一時的な使用として合理的な理由があった場合でも、契約が更新されている場合は通常の賃貸借契約として判断され、立ち退き料を請求出来る可能性が高くなります。

4.定期建物賃貸借契約の場合

定期建物賃貸借契約とは、契約を更新しないことを前提とした契約のことで、この場合も立ち退き料は請求出来ません。

定期建物賃貸借と認められるには

  1. 契約書を公正証書などの書面で交わすこと
  2. 契約期間満了の際、契約更新せずに終了する旨を契約書へ記載すること
  3. 契約締結前に定期賃貸借である旨を書面で交付・説明していること

この3つの要件を満たす必要があります。

上記のいずれかでも怠っていた場合や、契約更新している場合は通常の賃貸借契約と判断されます。

5.取り壊し予定の建物賃貸借

区画整理や建て替えなどで取り壊すことが明らかな場合、「取り壊し時期に賃貸借契約が終了する」旨と「建物を取り壊す具体的な理由」を記載して契約した場合、立ち退き料を請求することは出来ません。

この契約は取り壊す時期が明確になっていることが前提ですので、「貸主が病気になったら取り壊す」など、取り壊す要件が不確定な場合、通常の賃貸借契約と判断されます。

6.競売によって所有者が変更した場合

競売で大家が変わり新たな大家から立ち退きを要求された場合、「アパートなどに入居する前に設定された抵当権による、競売によって所有者が変更になった場合」立ち退き料は請求できません。

抵当権が設定される前から入居していた場合は、正当事由がなければ立ち退く必要はありません。
また、通常の売買で所有者が変わった場合でも同じく正当事由がなければ立ち退く必要はありません。

立ち退き料を請求出来る場合

上記に該当しなかった場合は、立ち退き料を請求出来る可能性が高いと言えます。
実際に定期建物賃貸借や一時使用の賃貸借契約で借りている方は少なく、ほとんどの場合は「正当事由」があるかどうかがポイントとなります。
自分は立ち退き料を請求出来るかどうか知りたい方は、是非立ち退きに応じる前にご相談下さい。

2010年11月30日 |

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立ち退きを迫られたら

まずは貸主から立ち退きを要求されている事情が「正当事由」として認められるかどうかを確認する事になります。

具体的には、賃貸借契約の種類、立ち退きの事情、立ち退きの条件、契約違反の有無、これらを総合的に考慮して、正当事由の有無を判断することになります。
正当事由に該当するか分からない場合は専門家へ相談して確認してみましょう。

ここで立ち退きに応じてしまうと、正当事由がない場合でも立ち退くことになってしまいます。
貸主などから署名や捺印を求められた場合、どんな書類なのか特に慎重に確認するようにし、分からない場合の即答はしないようにして下さい。

正当事由があった場合

この場合、貸主から立ち退き通知が届いてから6ヶ月~1年の間で賃貸借契約が終了しますので、賃貸借契約が終了するまでに立ち退く事になります。

正当事由がなかった場合

この場合、貸主へ「立ち退き拒否」または、「立ち退き料」を請求することが出来ます。
立ち退き料の決め方ですが、具体的な決まりはありません。
判例や借家権価格などが目安となりますがこれはあくまでも目安であって具体的には貸主の事情と借主の事情や話し合いで決められていきます。
借家権価格=(更地価格×0.5~0.7×0.3)

立ち退きでよくある誤解

「書面で通知」することで6ヶ月後に賃貸借契約は終了すると誤解している方が多いようです。
正確には、「正当事由」「書面での通知」この2つが必要です。
立ち退きに合意してしまった場合や賃貸借契約の種類によっては、正当事由がなくても立ち退く必要がありますが、基本的には「正当事由」がなければ立ち退く必要はありません。
貸主の立ち退き要求には「正当事由」が必要と覚えて下さいね。

立ち退きの正当事由

貸主の都合によって、賃貸借契約の解除や更新を拒否し、立ち退きが認められるには
「正当事由」「通知」が必要です。
基本的には貸主の都合で借主を立ち退かせることは出来ませんが、貸主と借主それぞれ事情を比較して、貸主が立ち退きを要求する事情が「正当事由」として認められると、借主は賃借物件を明け渡さなくてはいけません。
そこで、正当事由とは具体的にどのような内容を指すのかを立ち退きの理由ごとに確認してみましょう。

1.建物の老朽化

入居中のアパートやマンション、借家が倒壊してしまうと重大な被害が発生してしまう為、改築や建替えを理由に借主へ立ち退きを要求する場合です。
建築年数や建物の状態など、老朽化の程度によって正当事由と認められるかが変わります。
建物の状態によりますが築20~30年程度では、倒壊の危険が切迫しているという場合でなければ、正当事由として認められる可能性は低いと言えます。

2.物件の売却

貸主の借金や相続税の支払があり、物件を少しでも高く売るために立ち退きを求める場合です。
このような場合、貸主に他に財産がなかったり、借主が住んでいる状態で売る事が極めて困難などの事情がない限り、正当事由と判断される可能性は低いでしょう。

3.貸主の親族の利用

最も考えられるケースが、貸主の子供が結婚し、結婚後の新居とするために明け渡してほしい、というものです。
貸主側と借主側のどちらが賃借中の物件を必要としている度合いが強いかによって、正当事由と認められるかが変わります。
貸主側に他の住居がなく、借主の経済的事情や生活状況などから、立ち退きによる損害が少ないといった事情でない限り、これだけで正当事由と認められる可能性は低いと言えます。

4.貸主自身の住居や店舗としての利用

貸主が商売を始める為の店舗や事務所、自分自身の住居としての利用など、貸主自身が必要としている場合です。
貸主自身が借家住まいであったり、営む事業が貸主の生活に不可欠といった事情がある場合は正当事由と認められやすくなりますが、借主に移転する資力がない、借主も店舗を構えて営業しているなどの事情があれば、これだけで正当事由として認められる可能性は低くなります。

正当事由があるかどうかの判断基準

「特定の事情があれば正当事由に該当します」のような明確な基準はありません。
正当事由と認められるかは、貸主側の事情と借主側の事情を比較して考慮されます。

例えば、同じ老朽化による立ち退きを要求された場合でも、借主に経済的余裕があれば正当事由と認められる可能性は高くなりますが、借主に経済的余裕がなければ正当事由と認められる可能性は低くなります。
したがって、正当事由に該当するかどうかはケースバイケースと言えます。

2010年11月25日 |

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立ち退き料の相場と計算方法

立ち退き料には相場や決まった計算方法というものがありません。
なぜ相場や決まった計算方法がないのかというと

  • ほとんどのケースが裁判所外の話し合いで解決している
  • 裁判になった場合でもケースごとに事情が違う為、算定方法を確立出来ない

このような理由があるためです。

その為、立ち退き料は貸主と借主が物件を必要とする事情を比較し、過去の判例や借家権価格などを参考に、最終的には話し合いで決められます。

立ち退き料算定に影響を与える事情

立ち退き料を算定するときは、次のような事情を考慮します。

貸している側の事情

  • 年齢
  • 職業
  • 資産
  • 健康状態
  • 経済状態
  • 家族関係
  • 利用目的(居住用、事業用、売却など)
  • 建物の場合は建築年数、老朽化の程度
  • 賃貸借契約の種類(普通賃貸借、定期建物賃貸借、一時使用の為の賃貸借、取り壊し予定の賃貸借)
  • 移転先の斡旋状況

借りている側の事情

  • 年齢
  • 職業
  • 資産
  • 健康状態
  • 経済状態
  • 家族関係
  • 利用目的(自家用、事業用)
  • 賃借期間
  • 立地
  • 未払い賃料の有無

このように、お互いの全ての事情を比較して、貸主の方が物件を必要としている事情が強いとなれば、立ち退き料は低くなり、借主の事情の方が強いとなれば、立ち退き料は高くなることが一般的です。

立ち退き料の計算方法

どれくらいの立ち退き料が請求すればいいか分からない場合、まずは引越し費用はどれくらいかかるかを計算してみましょう。その額を立ち退き料の最低ラインとして考える方法もございます。
ただし、事情によって立ち退き料は大きく変わりますので、請求額や請求方法などで不安な場合は一度専門家への相談を検討されて下さい。

1,000円で分かる。立ち退き料算定サービス

立ち退き料は請求出来るのか?立ち退き料はどのように請求すればいいのか?
このようなご相談へ、判例をもとにあなたの立ち退き料を1,000円で算定致します。
自分の立ち退き料を知りたい方は、下記のページで立ち退き料の算定について説明をしておりますのでどうぞご参照下さい。

2010年11月17日 |

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立ち退き料とは

貸主の都合で立ち退く際に、明け渡しと共に借主へ支払われるお金を「立ち退き料」といいます。

立ち退き料が支払われるケースは様々ですが、最も代表的な例が、貸主の都合だけでは正当事由とは認められない場合に、立ち退いてもらう条件として立ち退き料を支払うというケースです。

つまり、立ち退きを求める事情=正当事由と認められない場合に、立ち退き料をプラスすることで、立ち退きを求める事情+立ち退き料=正当事由このように認められる場合があるのです。

立ち退き料の範囲

立ち退き料は次の4つの補償が含まれるとされています。

1.移転費用の補償

  1. 引越しにかかる費用
  2. 引越し先への敷金・礼金、保証金など
  3. 賃料が増加する場合は引越し前の賃料との差額など

立ち退き料が発生する場合、まずはこの移転費用をどこまで補償するかを決めることになります。

2.立ち退きによって失う利益の補償

  1. 物件の間取りや広さ、交通の便など、生活環境の悪化に対する補償。
  2. 店舗を構えて商売をしていた場合、移転による顧客減少など減収分に対する補償、営業再開までの休業補償、移転による諸経費に対する補償。
  3. リフォームなど、賃借物件へ支出した費用に対する補償。

3.立ち退きによって失う利用権の補償

今後も土地や建物を利用出来たはずが、立ち退きにより利用を中止することになった事に対する補償。

4.早期解決に対する補償

正当事由が明確な場合でも、強制的に立ち退かせるには裁判が必要です。
裁判には多額の費用と長い時間がかかりますので、面倒を避ける為にある程度の立ち退き料を払う場合があります。

立ち退きの際に上記のうちどこまでを補償するかは、それぞれの事情に個々の事案によって変わることになります。一般的には立ち退きの事情が正当事由に遠いほど、立ち退き料の範囲は広く(高額)なり、正当事由に近いほど立ち退き料の範囲は狭く(低額に)なります。

2010年11月16日 |

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立ち退きの通知を受けて、お困りの方へ

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